最高裁判所第三小法廷 昭和41年(オ)305号 判決 1966年10月25日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人小島竹一の上告理由一について。
記録によると、所論の証人Dおよび被上告人B1の各供述は、遺産分割協議書の作成にあたり、あらためて特段の話し合いはなかつたけれども、両名とも、本件各不動産を被上告人B2の単独所有とすることに異存はなかつたので、右協議書の内容どおりになることを承知の上で、被上告人B1においてこれに捺印したという趣旨に解される。したがつて、右各供述は、必ずしも原判決の認定と牴触するものではなく、原判決が、右供述とその他の挙示の各証拠とを総合して、判示のような遺産分割協議の成立を認定したことに、所論のような採証法則違背の違法が存するものとは認められない。論旨は、供述の一端をとらえ、その全趣旨を正解しないものというべく、採用できない。
同二について。
原判決の認定によると、亡Eの遺産中甲府市a町b番の田一筆を除く不動産は全部被上告人B2の所有とする旨の協議が成立したというのであり、甲第二号証(遺産分割協議書)の記載も右認定に照応するものであるから、分割協議の対象たる物件の特定において欠けるところはない。また、共同相続人全員の合意により遺産の一部についてなされた分割協議の効力を否定すべき理由もなく、右協議を無効とする論旨は、独自の見解によるものにほかならない。そして、以上の所論と同旨の主張を記載した上告人の昭和三九年七月二一日付準備書面は、原審口頭弁論期日において陳述されていないこと記録上明白であるから、原判決がこの点について特に言及しなかつたのは当然であり、もとより判断遺脱の違法は存しない。論旨はすべて理由がなく、採用できない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 下 村 三 郎
裁判官 五 鬼 上 堅 磐
裁判官 柏 原 語 六
裁判官 田 中 二 郎